東海楽器のレプリカ度が頂点に達していた１９８１年製のES-100J。個人的に１９５９年製のギブソンのドットの３３５を所有していますので、この東海の再現度の高さを十二分に認識できます。中でも１９８１年のES-100がベスト・オブ・ベストであることを以下、ご説明していきます。
まず１９８１年製以降は、東海楽器的にグレードアップの意図があったのでしょうが、ヘッドにアーティスティックなインレイが入ってしまい、ドットの３３５の魅力を半減しています。
また１９８１年製でも、ES-150はなぜかエボニーの指板ですので、これですと、３３５ではなく、３５５のフィーリングになってしまいます。１５０はドットインレイも白蝶貝を奢っているのですが、３３５のドットはセルロイドがむしろ雰囲気があるのです。ヴィンテージにより近いのはES-100ということが、ここでも言えることになります。
外観的には以上の通りで、１００がベターであると言えます。
ここからは１５０と１００に共通の部分ですが、まず、ネックのマホガニーが、ヒールで継ぎ目なしのワンピースのマホガニーです。ヘッド角は１８度。ナットは牛骨の完全ハンドメイド。またセンターブロックはメイプルをスプルースでサンドしており、ヴィンテージに完全に準じています。
ミッキーマウスイヤーの両サイドの角の部分のプレスによるアーチも、再現度が素晴らしいです。これは当時のカタログによると１９５９年のオリジナルを完全にレプリカしているようです。
トップとバックのラミネイトは、実はこの年のみメイプルの３プライです。カタログでも語っているように固い材となり加工が困難なのですが、この年はサウンドを考慮し、メイプル３プライにこだわったようです。ちなみに翌年以降はメイプル３プライではなくなっています。
ピックアップはロックとジャズの２タイプに分け、それぞれ型番でＲとＪとしていたのですが、個人的には圧倒的にＪが好みでした。ヴィンテージの３３５に酷似した音を紡ぎ出すからです。
東海楽器によれば、このＥＳシリーズに特化して特別に開発したピックアップで、カタログには「実は何を隠そうプロジェクトチームがセミアコースティックギターを開発するにあたり長い間あたためていた重要事項のひとつなのだ」としています。その心は、１本のギターでロックからジャズのサウンドをフォローするのは能に近いと考え、ピックアップのタイプをあえて変えたということです。
ジャズタイプのピックアップは「ロックとは違い、どちらかというとフルアコに近いサウンドが強調されている」「甘い中音がたまらない」「ジャズ特有の７ｔｈや９ｔｈを駆使したコードにもバッチリとけこみ厚みのあるサウンドを展開する」と説明、「カバードタイプで中はクリームボビンだ」と、いわゆるヴィンテージのPAFのダブルホワイトまで再現しているのです。カバーを外さねば見えないのに、です。
そのほか、１こぶのクルーソンタイプのペグ、オイルコンデンサー、ブリッジの駒はブラス、アルミのテールピース、塗装は「スペシャルオールドフィニッシュ」と名付けられたラッカーと、本当に全く手抜きなしです。相当にコストがかかっただろうと思われ、このESシリーズだけはストラトタイプやレスポールタイプと違い、２機種のみで、当時のと１５万円であったということからも、相当手間がかかったことが推察されます。
当時１万であった専用のケースも付属します。
フロントピックアップのエスカッションのネジが１か所、ネジの＋溝を舐めてしまっており、少し浮いたノークレームノーリターンで、誠実なお取引をして下さる方のご入札をお待ちしております。




（2022年 4月 19日 1時 35分 追加）近年ものの東海楽器のESシリーズと比較していただければ、塗装の色合いや質感、各パーツの再現度、木部の素材としての素晴らしさの違いが際立っていることがお分かりかと思います。東海のヴィンテージはレスポールタイプやストラトタイプが大きく評価されていますが、このESシリーズにこそ、当時の東海の技術力・分析力が反映されており、このギターは本当にヴィンテージに肉薄していて、素晴らしいと思います。（2022年 4月 19日 2時 26分 追加）ラッカー塗装の質感は、まさに「濡れたような艶」です。近年ものの東海とは全く質感が違うことが、画像でさえお分かりいただけるかと思います。（2022年 4月 21日 13時 15分 追加）今回ご質問をいただいて、再度ギターを確認して気づきました点を以下に記します。
まず間違いの訂正ですが、ドットのポジションマークはパーロイドではなく、リアルな貝でした。お詫びして訂正します（残念ながら（？）リアルヴィンテージより「豪華」です）。
あと、TOKAIの刻印入りのひとこぶペグですが、３弦のポストが曲がっています。これは入手時からですが、実用に特に問題がないため、そのままにしています。
ご質問でもありましたが、重さはリアル３３５と近似値の３５００グラム程度、ネックはナット幅が４１・４ミリほどで、しっかりしたCシェイプ’（ぺったりとしたものではない）ネックです。